|
横浜市救急救命士会 会長の吉田茂男と申します。 本日は、当会のホームページをご覧いただき誠にありがとうございます。 当会は、救急救命士法の制定直後にあたる、平成4年11月、全国初の救急救命士会として発足いたしました。 発足当初は、横浜市在住在勤の救急救命士を対象としたことから「横浜救急救命士会」という名称でしたが、その後、神奈川県内の救急救命士との広域的なネットワークを充実させる必要が生じ、平成7年からは「神奈川救急救命士会」に 名称を変更いたしました。 しかしやがて、メディカルコントロール体制の充実強化とともに、地域メディカルコントロール体制も整備されたことから、諸活動を地域化することとし、平成18年7月から「横浜市救急救命士会」として再スタートさせていただいたところです。 当会は今後とも、当会顧問医師や横浜市メディカルコントロール協議会、横浜市消防局など関係団体様の深いご理解とご協力のもとに、救急救命士・救急隊員・消防隊員のレベルアップ、スキルアップ研修、BLSやAEDなど市民の皆さまへの普及、救命ボランティア活動などを通じて、横浜市の救命率の向上に寄与してまいりたいと考えております。 会長として、3期5年目となりますが、もとより微力のため、皆さま方のお力添えを必要としております。どうぞ今後ともよろしくご指導、ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。
「東京マラソンにおける救命事例・功を奏した救命の輪」 横浜市救急救命士会 会長 吉田茂男
東京マラソン2007。出場者数は約3万人。事実上、アジア最大のマラソンイベントとなった。今回は第1回目の大会。東京都知事は「この大会で死者は絶対に出さない」と言ったと聞く。すべての関係機関は東京の威信にかけ「本気」で対応にあたったことだろう。
今回、私はフルマラソンのランナーとして参加したが、コース上から見てもその「本気」ぶりが窺えた。私は一人のランナーに過ぎないので、詳しいことは大会事務局に譲るが、コース脇などに約40台のAEDを設置し、そのうちの4台は大学の救急救命士ボランティア達が自転車に積載してコース上で警戒にあたったと聞く。大学ボランティア達の人数は約70人で、彼らの指揮者は携帯電話で連絡や指示を行うという周到ぶりだ。また、出場選手とともに医師・看護師のボランティア約100人が黄色いベストと赤い風船を付けて伴走し、不測の事態に備えた。沿道には救護所が多数あり、脇道では救急隊や消防隊が警戒にあたった。マラソンを走りながらもついついそのへんに目が行ってしまったのは、自分が消防組織に身を置いているための性であろう。
フルマラソンは過去3回の経験があるが、記録はいずれも4時間台と遅い。ロードレースは30回ほど走っているが、フルマラソンは10数年ぶりだ。今回は練習不足で自信がなかったが、自分の東京マラソンを楽しみたいと思った。
スタート時の気温は5度。冷たい雨だ。スタートラインを踏み、順調に走り始めたが、コースなかばで左足が故障し、ペースダウン。そのうち痛みのため走れなくなった。まあ完走できればいいかと沿道の応援を楽しみながら、大会運営体制などを観察しつつ、走ったり歩いたりを繰り返した。
ゴールまで残り1キロを切ったころ、前方で異変が起こった。ランナーが倒れたのだ。救急救命士の私の体はそのとき自然に動いていた。傷病者はすでに心肺停止状態(意識JCS300、死戦期呼吸、総頸動脈触知不能)であった。すぐに救急隊を要請したか否かを目撃者に確認。大会スタッフの方にAEDの手配を頼むと同時に、付近にいたスタッフの方に胸骨圧迫をお願いし、自分は呼気吹き込み人工呼吸を行った。30対2のCPRを2サイクルほど実施したころ、自転車に乗ったモバイルAED隊の国士舘大学の救急救命士達が到着した。予想外のAED到着の早さにびっくりした。沿道でランナーが倒れるところを目撃した小学生のお手柄で、駆けて大学ボランティアに急を知らせたのであった。 除細動電極をセットしAEDの解析を行ったが、当初は除細動不要の心電図であった。そのまま30対2のCPRを約5サイクル実施し、心筋等の酸素化が図られたころ、2回目の解析でAEDが反応した。間髪を入れず除細動を1回行い、すぐに胸骨圧迫から再開。約2分間ほどCPRを続けたところ、自己心拍が再開した。バッグバルブマスクによる人工呼吸のみ継続。しばらくして充実した自発呼吸も出現し、さらには救急隊到着前に、意識まで回復した。10数分間の出来事であった。 仕事がら、日常、心肺蘇生に従事しているものの、これほど短時間で意識まで回復する心肺停止傷病者はそう多くはない。これもひとえに早期CPR・早期除細動(救助者・AEDの効果的な配置と運用)、その場に居合わせた者の適切な対応、つまりは、救命の輪が奏功したものと考える。 AEDという医療機器は絶大な効果を持つ。しかしAEDだけでは助からない。AEDは、一次救命処置(早期通報・応援要請、早期CPR、早期除細動)に組み込まれた、欠かすことの出来ない医療機器なのである。AEDは、いつ誰がどう使うかをよく考え、計算して計画することが最も重要である。AEDが届くまでは、強く早く、絶え間ない胸骨圧迫と人工呼吸を続けるしかないのだから・・・
◆この新聞記事(神奈川新聞 2007.2.20) が、日本新聞協会の2006年度「ハッピーニュース 大賞」を受賞するとともに、日本新聞協会発行の「心がぽかぽかするニュース」 として出版されました。また、消防総監をはじめ、関係団体様から多くの感謝状や表彰状をいただき、身の引き締まる思いです。今回の救命に関わった全ての皆さまに深く御礼申し上げるとともに、この喜びと誇りを全国の救急救命士、消防職員の皆さまと分かち合いたいと思います。また、これらの出来事を通じて、国民の皆さまに心肺蘇生とAEDの重要性を広く知っていただけたことを大変嬉しく思います。 ◆上記の体験を踏まえ、同年11月に開催された「第27回横浜マラソン大会」において、横浜市救急救命士会のメンバーら約70名で救命ボランティア体制を敷いたところ、40歳台の男性がゴール付近で心肺停止状態となり、当会の救急救命士らが、路上で心肺蘇生等を実施、倒れた方は一命をとりとめ、完全社会復帰しました。当会は今後とも関係機関との連携を密にして、横浜マラソンに参加される皆様に安心と安全を提供すべく社会貢献をしてまいります。 【主な関連記事】 ◆神奈川新聞「横浜マラソンでも的確処置 男性走者 命再び」(2007.11.13 PDF版) ◆読売新聞「横浜マラソン出場 救急救命士ら 心肺停止男性へマッサージ(2007.11.13 PDF版)
|