自主研修報告
米国アーカンソー州EMS編
救急救命士 吉田茂男
友人を訪ねて
「メルトモ」のことを欧米では「イーパル」と言うそうです。この報告はインターネット・メールのやりとりから救急車同乗研修が実現したという体験談です。
そのイーパルとの文通は、ある米国人から見知らぬ私へ向けた救急隊に関する質問メールから始まりました。相手は米国アーカンソー州の病院のER(救命処置室)に勤務する42才(当時)のナース(看護師)です。彼は日本の武道がとても好きで過去に3回来日したという親日家です。

そんな彼とのメールが続いた半年後のある日、アーカンソー州へ救急の勉強に来ないかとの誘いがありました。EMS(救急医療サービス)への根回しも可能だし、宿泊は自宅にホームステイすればいいと。私は早速このことを妻に相談しました。なにしろ全額私費なのでお金のことが心配でした。すると驚いたことに妻は私の極秘計画をすでに察知しており1年前から渡航費用を貯めていたというのです。そんなわけで妻には本当に感謝しています。
次に心配だったのが英語力。今回は一人旅なのでなおさらです。一昨年のピッツバーグEMS訪問時の経験と反省から、もっと英語力を付けなければダメだと考えてはいたのですが、相変わらずの勉強不足で英語力のほうは英検3級程度(中学生レベル)のままです。本当に大丈夫?という自他の心配をよそに、とうとう救急車同乗研修10日間の一人旅が始まりました。
米国にはいろいろな救急業務のカタチがある
アーカンソー州は米国南部に位置します。日本からの直行便はなく、ダラスかシカゴを経由しなくてはなりません。あまりなじみのない州だし日本人観光客もほとんどないと思います。それなのに入国審査で入国目的を聞かれたとき「観光です」と思わず答えてしまい「リトルロックへ観光だって?」と入国審査官は怪訝そうな様子。なにしろ米国の同時多発テロ以降、警備体制が厳しくなっています。スーツケースも手違いで受取場所に届かず、トホホと不安になりかけたとき、到着ロビーで「吉田茂男さん、いらっしゃい」と日本語で書かれたカードを持った友人を発見、ホッと安堵しました。
州都のリトルロック市は人口18万人の美しくゆったりした都市です。

人口は州全体で約250万人と横浜市よりも約100万人も少ないのです。アーカンソー州は森林、湖、川など豊富な自然に恵まれた場所。それじゃやっぱり釣りをするしかないだろうと荷物の中にはルアーロッドまで忍ばせて行きましたが、とうとう帰国まで出さずじまいでした。この周辺では狩猟も一般的です。街のスーパーマーケットで誰でも銃が買えます。そんな状況ですから銃犯罪による救急出場も多いということで、ちょっと怖かったです。
さて、本題に入りましょう。
米国にはいろいろな救急業務の運営形態があります。
1 消防組織が行うもの(例:ニューヨーク市、シカゴ市)
2 消防とは別の公営組織が行うもの(例:ピッツバーグ市)
3 認可された民営組織が行うもの(例:今回の訪問地)
4 上記の複合型、その他
米国では救急業務の民営化がかなり進んでいるようです。私は救急業務を民営でやっているなんて当初信じられませんでした。しかし日本人にはなじみのないこの体制に強い興味を持ちました。民営であれば無駄を省き、最小の経費で最大の効果を挙げているのではないかと思ったからです。
それぞれのカタチ
米国における救急業務はプレホスピタル(病院前)における救急医療の提供そのものです。病院の多くが民間経営という実態のなか、病院前救急医療を提供する救急隊が民間経営でも不自然ではありません。
EMS会社は救急業務の認可を州から受け、当該地域と救急業務に関する業務独占契約をしています。一種の事務委託なのでしょうが競合する会社はないのかという疑問も感じました。
前述のように米国における救急業務はまさに医療の提供です。医療はあくまでも個人のものであって、医療機関との診療契約に基づくものという印象を強く受けます。後述しますが救急隊の利用料金も医療費として請求されるのです。しかしそう考えると、災害現場などにおける救急活動をどう考えれば良いのかという疑問が生まれます。その疑問を一件の救急出場が解決してくれました。
加害事故との911通報により、消防隊、救急隊、警察が出場しました。私も救急車に同乗して出場しました(下記ムービー参照)。このとき、面白いなと感心したのは、3種類のサイレン音が自動で切り替わることです。アクセルを踏んでいるときは「ウーウー音」、アクセルを離してエンジンブレーキがかかった時は「ヒュンヒュン音」、フットブレーキを踏んだときは「ビコビコ音」です。
(下記ビデオをご覧下さい。注:一部のブラウザでは再生できない場合があります)
さて、先着したのは消防隊です。要請があった民家のドアは内部から施錠されており、うめき声が聞こえています。このとき、民営である救急隊は資器材を準備してドアの後方で待機しました。

市の消防隊員は内部に歩行困難に陥っている傷病者がいて自らドアを開放できないことを確認すると足でドアを蹴破って内部に進入しました。まるで映画かドラマを見ているようでびっくりです。救急隊は破壊活動には一切加わりませんでした。消防隊に続き、救急隊、警察が中に入りそれぞれの仕事が始まります。
どうやら救急業務にこのような活動が必要な場合は消防や警察が行うしくみになっているようです。当初は民営の救急隊でうまくいくのだろうかという疑念がありました。しかし現場での救急隊は消防や警察とよく連携しており全く違和感はありませんでした。それぞれの組織がそれぞれの責任範囲で協調しながら仕事をしているという強い印象を受けました。
消防隊との連携
米国の多くの都市では緊急通報時、傷病者に一定の症状や条件等が認められた場合、消防隊(ファースト・レスポンダー)を同時出場させることになっています。これは消防・救急の組織形態にかかわらず行われています。米国には緊急通報受理に関する教育を行う「NAED」という国立学校があります。私が訪問したリトルロック市の救急管制センターではNAEDによる「EMDプロトコール」という早見表(写真)に基づいて緊急度と重症度等を判断し必要に応じてファースト・レスポンダーを同時出場させています。

一般的に消防隊は部隊数が多く、受持エリアが救急隊のそれよりも狭いため早い現場到着が可能です。消防隊は4人編成ですが最低2人は救急隊資格者(EMT-B)が乗務しています。消防車には全自動式除細動器(AED)等の資機材を積載しているため、救急隊の到着を待つことなく除細動(医師の指示不要)とCPRが可能です。
救急隊の現着時間は5〜8分ですが、消防隊は平均4分です。消防隊員による早期除細動と早期CPRが救命率の向上に大きく寄与していることは誰も否定できないことだと思います。
救急隊は2人編成です。機関員はEMT-B、隊長はEMT-Pが原則で、出場時は2人とも前席に乗っていきますが、搬送時は前後に分かれて乗車します。たった2人で体格の大きな人をどうやって救急車に乗せるのかと思いましたが、消防隊がストレッチャーの車内収容まで手伝うためほぼ問題はなさそうでした。米国では生活習慣上、住宅内で靴を脱がないことも活動をさらに容易にしていると感じました。
(注:NAED:National Academy of Emergency Dispatch、EMD:Emergency Medical Dispatch)
誰でもパラメディックになれる国
パラメディックの資格には国の免許と州の免許があります。国の試験のほうがやや難しいそうですが、国の免許を持っていれば他の州に移っても従事することができます。免許は教育を受け試験に合格すれば誰でも取得できます。
教育は単位制がとられており時間数という概念は一般的ではないようです。資格の修得期間は人によって違います。アーカンソー州では救急隊員(EMT-B)になるためには約6か月、パラメディック(EMT-P)は約2年間が平均的な修得期間ということでした。
教育を行うのはいずれも州立のメディカル・スクールです。最初からEMT-Pを目指したいのであればEMT-Bの教育に続けて受講することもできます。ただし努力は無論のこと時間と費用という条件もクリアしなければなりません。
パラメディックの教育課程は、講義、実習、病院内研修、救急車同乗研修等で構成されています。そこで気になる気管挿管の教育方法について聞いてみました。
気管挿管の教育はメディカル・スクールでの講義から始まります。(具体的な時間数はわかりません)次に実習です。実習は人形を使って行い、十分な訓練を積んだあとに試験を受けます。これに合格すると病院内研修に進み、人形を使った実習を受けることができます。ここでも十分な訓練を積み、指導医の試験を受けます。試験に合格すると指導医の監督下において人体を使った実習を行うことができます。しかし手技に不十分な点があると判断されると、また人形に逆戻りするそうです。こうして一進一退の訓練・試験を重ね、気管挿管の知識、手技について指導医の最終的な審査を受けることで初めて単位が取得できるということでした。
免許を更新するには2年ごとにメディカル・スクールにおいて72時間の教育プログラムを受けなければなりません。なお、再試験制度はないということでした。
メディカル・コントロール
メディカル・コントロールを簡単に言うと「医療の質を保証すること」です。この地域でメディカル・コントロールを行っているのは、AEPFという指導医の団体です。パラメディックが行う処置の手順はプロトコールで定められており、その主体をなすものはアメリカ心臓協会(AHA)のACLSです。
気管挿管、除細動、緊急カルディオバージョンや、静脈路確保、昇圧薬、抗不整脈薬などをはじめ各種薬剤投与などACLSで定めているものは医師の具体的指示(オンライン・メディカル・コントロール)は不要です。しかしプロトコールにないもの、あるいは状況がプロトコールから外れるものについてはその都度医師の具体的指示を必要とします。
一例を挙げると、緊急時におけるモルヒネの投与、気管穿刺、胸腔穿刺などがあるようです。なお、具体的指示は原則として搬送先医療機関の医師からもらうとのことでした。
事後検証について聞いてみました。パラメディックの処置がプロトコールどおりに行われたかは一次的にはEMS会社が監督指導しています。二次的にはAEPFの指導医が必要に応じて検証します。もしもパラメディックの資質が免許にふさわしくない場合の処遇について質問したところ、場合によっては免許の取り消しもあり得るという回答でした。
米国では市民による除細動(PAD)の普及が進んでいます。これは2000年5月にクリントン前大統領が米国の旅客機と政府の建築物すべてに全自動式除細動器(AED)を設置すると声明を出したことから拍車がかかりました。米国では一般市民でも4時間の講習を受ければAEDによる除細動を行うことができます。除細動の適否は機械が判断しますので医師の指示は必要ありません。AHAの2000年のガイドラインによりAEDによる除細動は一次救命処置として位置づけられるようになりました。我が国においても先般、日本循環器学会が突然死の原因となっている心室細動の治療ができる除細動器を、空港や駅など公共性の高い場所に設置し、一般の人も使用できるよう段階的に使用条件を緩和することを厚生労働省に提言したと聞きましたが歓迎すべきことだと思います。
(注:AEPF:Arkansas Emergency Physician’s Foundation、ACLS:Advanced Cardiac Life Support:二次救命処置、PAD:Public access Defibrillation:市民による除細動)
サード・ライディング
私がお世話になったのは「MEMS」と「Med Tran」(写真下)の二つの救急医療サービスです。

それぞれ管轄区域が違いますが、ここでは「MEMS:Metropolitan Emergency Medical Services」についてご紹介します。
建物の内部にはいわゆる指令室、事務施設、教育施設、宿泊施設などがあります。救急隊の勤務シフトは複雑で、ニューヨークやピッツバーグのように24時間を3部(8時間×3=24)に分けるといった単純なものではありません。勤務時間には6時間、8時間、24時間などがあります。このため勤務の編成がとても複雑そうでした。初日の私の同乗は早朝5時からの勤務でした。3時に起床して研修に向かうのはちょっと辛かったです。同乗したければ1日24時間でも良いと言われましたが、私は8時間で十分ですとつい遠慮してしまいました(苦笑)。
救急車は2人乗車なので、私のような同乗者はサード・ライディングと呼ばれます。同乗手続きの際に、事故に備え免責書類への署名を求められます。EMTの資格取得教育において救急車同乗研修は必須科目であるため、サード・ライディングはそれほど珍しいことではなさそうでした。
「MEMS」は民間の救急会社ですので署や出張所がありません。そのかわりステーションというものがあります。ステーションは市街地にある貸家や貸室などを利用した救急隊の待機場所です。どこもリビングルームにソファーとテレビがあるだけの殺風景な部屋です。

救急隊は指令室の指示により待機位置が均一になるよう各ステーションをローテーションします。ステーションで救急指令を待つ、いわゆるウエイティングも大事な仕事です。救急隊の待機指定場所はステーション以外にも病院や交差点といった場所がいくつかあります。なお出場指令の受信体制はどこにいても無線のみです。
(注:MEMS:Metropolitan Emergency Medical Services)
サイレン音
救急車のサイレン音は3種類あります。たぶん米国内すべて同じだと思います。一般的なヒューンという音、短いピッチのヒュンヒュンという音、もっと短いビコビコという音です。後者になるほど注意を促す効果が高い音です。面白いと思ったのは、この3種類のサイレン音の切り替えがアクセルペダル等の操作で自動的に切り替わることでした。アクセルを踏んでいるときはヒューン音、アクセルから足を離しエンジンブレーキがかかるとヒュンヒュン音、ブレーキを踏むとビコビコ音になるようになっています。搬送中、前席は機関員のみですから、この装置は運転に集中するために有用だと思いました。(冒頭のビデオをご参照下さい)
出場中は必ずサイレンを鳴らしますが、傷病者の状況によっては搬送中サイレンを鳴らしません。このような場合は散光灯も消して通常走行します。
基本料金は5万円
米国では救急車は有料です。ここでは基本料金が485ドルということですから約5万円です。これに走行距離1マイルごとに8ドル、さらに処置にかかった費用が加算されますからものすごい金額になります。米国の保険制度は複雑で理解できませんが、全額を保険会社が負担するというケースは少ないらしく、実際にはかかった費用の2〜8割ぐらいが多いと聞きました。保険の契約条件や利用状況によっても変わるので一概には言えないようです。
不取扱いの場合にはどうなるのか気になりました。パラメディックが現場で観察して救急医療が必要な場合は処置と搬送をすることになりますが、本人が忌避した場合にはリスクを説明したうえで署名してもらい不取扱いにするそうです。この場合、料金は無料になります。そういうシステムのためか、自分が病院へ行く必要があるのかどうか判断してもらうために救急車を呼ぶといったケースもあるそうです。
マルマル病院までお願いします
もうひとつ気になったのは、本人や家族が希望する病院とパラメディックが判断した病院の医療レベルが異なる場合です。例えば、パラメディックは3次病院で救急医療を受ける必要があると判断したが、本人や家族がかかりつけの1次や2次の病院等への搬送を希望した場合などです。
この場合、パラメディックは3次施設で救急医療を受ける必要性を説明しますが、受け入れてもらえない時は希望どおりの病院へ搬送するそうです。なぜならば、希望どおりにしなかったことによって告訴される場合があるからだそうです。個人の意志や自由が本当に尊重される国なのですね。
トリアージ・ナース
病院はUMASのエマージェンシー・トラウマ・センターを見学しました。ここは友人看護師が勤務している場所です。(写真下)

救急受付にはトリアージ・ナースと言われる看護師が待機しており、救急隊からの応需依頼に対応します。(写真下)

病院への搬送連絡はすべて車載無線機で行うため、病院側も無線機で応答します。携帯電話を使わずに無線を使うシステムは以前に訪問したシカゴ市やピッツバーグ市も同じでした。
病院到着後、トリアージ・ナースはパラメディックから引き継ぎを受けるとともにバイタル・サインをとります。そして緊急度・重症度を判断し、診察の順番や処置室番号の指定、経時的な観察をしています。救急隊が搬送してくる傷病者だけでなく救急外来にやってくる傷病者についても同じ事を行うため、救急隊が搬送した傷病者でも症状などによっては診察が後回しになることがあります。
トリアージ・ナースの責任は重大ですがとても良いシステムだと思いました。ナースの外見は日本の一般的なイメージとはだいぶ異なり、スクラブという手術衣のような上下を着ています。色は自由なようで紺色の人もいれば花柄の人もいます。日本と違い男性看護師も多くいます。当初は医師との見分けがつきませんでしたが、医師との見分け方は白衣を着るかどうかなのだということが、そのうちわかりました。
(注:UMAS:University of Arkansas for Medical Sciences)
救急活動記録
救急活動記録票にあたる書類は「Prehospital Care Report」(下記様式)と呼ばれます。

様式の一部は州のすべてのEMSで統一されています。あらゆる情報が複写式A4用紙にまとめられています。ここには時間経過、観察結果、処置内容等が記載されており、救急車利用料金請求の根拠にもなっています。
この書類の1枚目は傷病者収容書の機能を兼ねていますが、署名をするのはトリアージ・ナースであって医師ではありません。また傷病名を記入する欄もありませんでした。
カー・ウオッシュ
友人は病院勤務の看護師ですが自宅付近にあるボランティア消防署の署員でもあります。その友人が私に「カー・ウオッシュに行こう」と言いました。洗車?私はなんのことかわからないまま彼の車に乗りました。
到着したところは簡素な消防署でした。車庫の前で子供や女性が一般の車を洗車しています。

その日は週末だったため自分の車の洗車をしているのだろうと思ったら大間違いでした。
この地域にはボランティアで組織する消防署があります。署員は州の消防学校(ファイアー・アカデミー)で教育を受けています。消防の経費は地域住民の税金によってまかなわれているのですが財政的に厳しいため、週末になると署員と家族が総出で消防署に集まり、住民のマイカーを洗車して寄付をもらうのです。寄付金を入れる場所はなんと防火靴でした。それぞれの署員、家族が手作りのドーナツやシチュー、飲み物などを持ち寄って1日を消防署で過ごします。私は彼らの姿を見て感動しました。自分達の地域は自分達で守るという自治体消防の理念そのものです。彼らは全員、住民の負託に応えるための強い意志と誇りを持っていました。
消防署でアイデア資機材をひとつ見つけました。ホース洗浄のための資機材です。

鋳物でできており内部は中空で厚いドーナツのような形をしています。このドーナツに消防ホースを連結し水圧をかけると内周に一回りある隙間から高圧の水が中心に向かって吹き出します。ここに汚れたホースを入れて洗浄するのです。この付近は郊外地域なのでホースの泥汚れが多く洗浄に苦労しているのだろうと思い感心しました。
911同時多発テロの1周年の日に
9月11日、あの忌まわしい米国同時多発テロ事件の1周年の日です。
ちょうどこの日、追悼集会が行われたため、日本人ではありますが同じ消防職員としていくつかの集会に主役側として参列させていただきました。

集会の席で消防職員等に向けられる賛辞の言葉は惜しみないものでした。市民の皆さんは総立ちになっていつまでも私たちに惜しみない拍手を送り続けました。この仕事に就く人の礎になっているものは国民の消防職員等に対する強い尊敬と感謝なのだと思います。
同じ日、お世話になった救急隊員の方へのお礼として昼食をご馳走することを思いつきました。救急車でレストランに行き、無線で救急指令を待ちながら食事し代金を払おうとしたところ店員がこう言ってとめました。「今日はあなた方からはお金はいただきません。私たちが安心して暮らせるのはあなた方のおかげなのですから」と。私は感動に包まれ、息が詰まりました。
ヤーオ!
「ヤーオ!」は消防の挨拶言葉です。ただし米国南部の州の方言のようなものだそうです。「Ya’ll」と書くそうですが、「You are all」の略かも知れません。意味は「みんな一緒!」です。どこでもこの一言でお互いに笑みがこぼれます。今回の訪問で私は恐らく100人以上の方と握手したと思います。どの消防職員、救急職員も気さくで素晴らしい人ばかりでした。日本人でも消防ということだけで受け入れてもらえることは驚きでした。お土産として消防署長から”EMT Fire Fighter”のステッカーが貼ってある消防隊の黄色いヘルメットをもらったときは本当に驚きました。大きくて重い荷物になりましたが私にとって何よりの記念品になりました。
また、たまたま、BENTON消防署を訪問中に火災出場がありました。防火着装から火災出場まで結構早かったです!消防精神は世界中どこでも一緒だと感じました。
(下記ビデオをご覧下さい。注:一部のブラウザでは再生できない場合があります)
最後に
米国では救急の民営化が進んでいるということを冒頭でも述べました。ひとつのスタイルにこだわらず地域事情に応じた救急業務が実施されていることを自ら2度のEMS訪問を通じて体感しました。地域によってそれぞれ人口、人口密度、年齢構成、医療施設の整備状況、道路状況、税収などが異なるなか、市、群、広域町村などの地域単位で最も効率的かつ効果的な救急業務の対応が考えられていると思います。もっとも素晴らしいと思うことは、傷病者の救命を主眼とした連携活動が組織等にこだわらず実践されていることです。市民に対するバイスタンダーCPR教育を行っているのは誰かという私の質問に対して帰ってきた答えは「それもすべての市民」でした。
最後になりますが、私の個人的な研究意欲を理解してくださり、気持ちよく送り出して下さった職場の皆様に対し、この場をお借りして厚くお礼申し上げます。事前調整から宿泊まで面倒を見てくれた看護師のデビッドさん、家族のように親しくしてくださった一家の皆さん、また現地でお世話になった陽気なパラメディックの皆様(下記写真)に深く感謝いたします。本当にありがとうございました。またいつかお会いしましょう。

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